0.はじめに
人が生きていくのに必要なものである「衣・食・住」。毎日変わる「食」や「衣」と比べて、「住」はそう頻繁には変わらないが、たとえば小さい頃に引っ越しを経験したとか、大人になって一人暮らしをし始めたとか、「住」が変わるタイミングはきっとあなたの人生でも大きなイベントだったはずです。
家を借りるとき。隣の街に新しい商業施設ができるとき。結婚を機にマイホームを買ったとき。古くなった実家を建て直すとき。近所のお店が潰れて別のお店が建ったとき。これらはすべて「不動産」に関係するもので、不動産を貸したり売ったり直したりするその裏側には、必ず「不動産の営業」が活躍している。
さまざまな種類が存在し、特徴も魅力もそれぞれに異なる「不動産営業」。その奥深い世界をご紹介いたします。
1.そもそも「不動産」とは?

「不動産」というのは「動かない財産」という意味である。現金はもちろんのこと、車や時計、家電製品など、動かせる財産は文字通り「動産」と呼ばれる。その反対で、動かせない・固定されている財産、たとえば土地や建物、石垣、橋などが不動産にあたる。
1-1 ダントツで大きく、しかも安定しているマーケット
不動産を扱う業界、そのまま「不動産業界」の市場はとても大きく、その規模は実に44兆円とも言われている。
人生最大の買い物が「家」であることからも分かる通り、あらゆる商品の中でもトップクラスに高額なものを扱うからだ。そして、どんなに時代が変わっても世の中から建物がなくなることはないため、圧倒的に安定している分野だとも言える。さらに、日本の不動産は現在、海外からの注目も集めており、今後は「投資」目的での不動産ビジネスも盛んになっていく。まさに、さまざまな面で可能性のあるマーケットなのである。
1-2 不動産の種類
1-2-1 いろいろな不動産
不動産と一口に言っても、その種類はさまざま。たとえば、一番身近なのは私たちがふだん住んでいる「家」だが、他にもオフィスビルや店舗などの「テナント」、お店がたくさん入ったショッピングモールのような「商業施設」もある。さらには、役所や病院のような「公共施設」、土地、橋や石垣なんかも不動産にあたるのだ。
1-2-2 不動産はどうやって作られるのか
いろいろな不動産があると分かったところで、今度は「成り立ち」について見てみよう。
外を歩いていて「新築マンション分譲中!」「3LDK、新築一戸建て!」といった紙が電柱に貼られているのを見たことはないだろうか。工事現場の看板に、建築予定のマンションが宣伝されていたり、電車の中づり広告などでどこどこのエリアに新しくマンションができるといった情報を見たりする人も多いはずだ。
そうした物件は、どのようにして世の中に出ていくのだろうか。
A.企画
そうした物件が新たにつくられる場合、「どこにどんな物件を建てるか」を考えるところからはじまる。人気の沿線エリアに一人暮らし向けの小さめのマンションを作る、郊外のエリアにファミリー層向けの一戸建てをまとめてつくる、再開発された地域に大型のショッピングモールをつくる、といった感じだ。
B.用地取得
売れそうな不動産の企画ができたら、物件をつくるためにまず準備するのが土地である。そのエリアに空き地があるか、もしくは土地を売ってくれる人がいないかを探していくのだ。特に、大きな物件を建てるために広い土地が必要になる場合は、デベロッパーと呼ばれる専門の不動産会社(企画開発会社)がそれをおこなうことも多い。
C.建築・施工
土地が確保できたら、実際に物件をつくっていく「建築」へと進む。設計士がいて、現場監督がいて、職人がいて、計画表にあわせて建築を進めていくのだ。そうしてできあがった物件をお客さんに買ってもらう段階が「販売」であり、販売の方法は物によってさまざまだ(後ほどくわしく説明する)。
D.利用・活用
また、すべてが販売されるわけではなく、不動産を貸すだけの場合もある。一人暮らしで部屋を借りるときに「まちの不動産屋さん」を利用したことがある人もいると思うが、不動産屋さんはいわゆる「不動産仲介会社」と呼ばれ、「賃貸・仲介」を専門にしている。最後に、販売・仲介された物件を「管理」する必要もある。マンションの管理人がまさにそれにあたり、不動産の管理を専門にしている会社も存在している。
いろいろと説明してしまったが、覚えておくポイントとしては「不動産ができるまでには、いろいろな段階とさまざまな会社が関係している」ということと、「できあがった不動産は売られたり貸したりされている(それを行うのが不動産営業)」ということだ。
2.不動産をあつかう「営業」の仕事とは
不動産が世の中に生み出され、活用されていく中で、それをお客さんと結びつける仕事が「不動産営業」である。さまざまな不動産があり、さまざまな活用法が存在するため、その営業もまた幅広い種類が存在する。
求人の数が多い順にそれらを並べると、以下のようになる。
- 販売営業(建売、注文、マンション)
- 賃貸仲介営業
- リフォーム・リノベーション営業
- 用地仕入れ営業
- 不動産投資営業
上位3つはいずれも、お客さんが住むための物件(居住用の不動産)を提案するものである。お客さんと不動産の関係性が異なっており、物件を新たに買ってもらうのが「販売営業」、物件を新たに借りてもらうのが「賃貸仲介営業」、すでに持っている物件を直してもらうのが「リフォーム営業・リノベーション営業」となっている。
続く「用地仕入れ営業」は、お金の流れが他とは逆で、お客さんにお金を出してもらうのではなく、こちらがお金を出してお客さんに物件を売ってもらう(買う・仕入れる)営業である。
最後の「不動産投資営業」は、お客さん自身が住む物件ではなく、他の人に住んでもらって家賃収入を得るための投資をおこなってもらうものだ。
おおまかに分類を見たところで、それぞれの営業のくわしい説明に移っていく。
3.不動産営業の中身と魅力
3-1 多彩な不動産営業
不動産営業全般に共通するのは、有形商材(目に見える商品)を扱い、それが生活に密接にかかわるもの(決してなくならないもの)であるということだ。大事なものであるがゆえに、資格も整備されている。日本最大の国家資格である「宅建(宅地建物取引士資格)」のほか、「不動産鑑定士」や「土地家屋調査士」などさまざまな専門資格が存在する。それらを取得することで、資格手当がもらえたり、就職・転職で有利になったりするのだ。
さらに、給与水準は他の業界の営業と比べて高いほうに分類される。営業という職種自体、接客やサービス業、事務職などと比べると高い傾向にあるが、その営業の中でもさらに収入は高いほうである。種類によって稼ぎやすさ・営業スタイルなどが変わるため、ぜひ自分にあったものを選んでみてほしい。
「どれを選んでいいかわからない」という方向けに、簡単な診断シートと比較表を用意した。あくまで参考情報なので、各説明もあわせて読んだ上で検討していただきたい。
3-2 各不動産営業の説明
3-2-1 販売(建売、注文、マンション)
あつかう金額が大きく、難易度は低くないが、そのぶん稼ぎやすいのが「不動産の販売」である。
A.仕事の流れ
販売であつかう物件は、まず「一戸建て」と「マンション」に分かれる。さらに「一戸建て」の中には、すでに完成した物件を売る「建売住宅」と、お客さんの希望にあわせてイチからつくっていく「注文住宅」の2つがある。
「建売住宅」と「マンション」は、基本的にはその物件がある場所で営業をおこなうことが多い。チラシやWebサイトなどで情報を見て問い合わせがあったお客さんに対し、現地で物件を案内しながら、購入してもらえるよう促すのだ。外観・内観・間取りなどは決まっているが、注文住宅に比べて価格は安く、契約から入居までの期間も短いので、人気エリアや物件によってはトントン拍子に契約が取れるケースもある。
「注文住宅」の場合は、まだ物件がないため、住宅展示場で営業をおこなう。「うちだったらこんな物件が建てられますよ」と案内をしながら、興味を持ってもらえたお客さんに、土地探しから手伝いをする。イチから家づくりをする面白さがあり、建売住宅と比べて価格も高めだが、その分、入居してもらうまでの過程が長い。
B.営業スタイル
一回の契約で取りあつかう金額は1000万円前後~数億円ほど。多くのお客さんにとって人生最大の買い物であり、初めて会ってその日に契約してもらえるようなものではもちろんない。たいていのお客さんは、他のメーカーや物件を並行して検討しているので、何度も打ち合わせを重ねて希望や条件などを聞いていきながら、自社に決めてもらえるように働きかける必要がある。契約後もアフターフォローがあるため、長い付き合いをする関係として、いかに信頼関係を築けるかが重要と言える。
C.魅力・面白さ
お客さんの人生最大の買い物、その取引相手として選んでもらえることは大きなやりがいにつながる。はじめての住宅購入で何がいいのか・何をすべきか不安なお客さんに寄り添い、「あなたで良かった」と心から言ってもらえる経験は、営業として何よりうれしいことだろう。
D.知っておくべき点・大変な点
金額が金額だけになかなか契約が決まらないことも珍しくないため、新規開拓の営業として大変さは存在する。また、住宅ローンの契約をはじめ、さまざまな書類のやり取りや手続きが必要なため、お客さんと対面している時間以外にもいろいろとやることは多く、会社の体制によっては営業の負担が多く、忙しいケースもある。
また、建売やマンションなどは、その会社の集客力が弱かったり、エリアや価格などが理由で物件があまり売れていなかったりすると、ポスティング(チラシ投函)や近隣エリアへの飛び込みをおこなってお客さんを見つける必要があるケースもある。
E.給与体系
契約物件数に応じたインセンティブ(歩合)を採用していることが多く、一件の契約につき数万円~数十万円ほどが支給される。中には、完全歩合給の会社もある。大型の契約を月に数件取れれば月収が100万円を超えることも珍しくなく、1000万円以上稼いでいる営業もざらにいる。いわゆる、稼げる営業の代表例の一つである。
F.向き/不向き
無理に物件を売り込んでいくのは禁物だが、ときに慎重になりがちなお客さんの背中をぐっと押してあげる場面があるため、お客さんから信頼される真面目さだけでなく、ある程度の押しの強さや勢いも必要だ。そうしたガツガツとした営業にすごく抵抗感があるという人には、あまりおすすめしない。
また、「給料はそんなに上がらなくていいから楽な仕事がしたい」という人にも向いていないだろう。お客さんのために全力で向き合い、その結果として対価・報酬がついてくることを楽しめる人にチャレンジしてほしい。
3-2-2 賃貸仲介
不動産営業の中でも、いちばん身近でなじみのあるのがこの「賃貸仲介」だ。
A.仕事の流れ
部屋の間取り図などがたくさん張り出してある「まちの不動産屋さん」と聞いたら、たいていの人は「ああ、あれか」とイメージできるだろう。「賃貸=部屋を借りる」「仲介=間を取り持つ」という名前のとおり、部屋を貸したい人(物件のオーナー)と、部屋を借りたい人(居住希望者)の間に入って、そのやり取りをサポートする仕事である。
賃貸仲介の営業は、(たいていは駅の近くにある)店舗に勤務する。「その地域で部屋を探しているから、希望に合う部屋を紹介してほしい」というお客さんもいれば、SUUMOやアットホーム、ホームズといった賃貸情報サイトなどを見て「この物件を実際に見てみたい、契約したい」というお客さんもいる。前者であればお客さんの希望の条件を聞いた上で、実際の物件を案内して回り(いわゆる「内見」)、契約を結ぶところまでをおこなう。
B.営業スタイル
来店したお客さんに対する反響型の営業で、自分からお客さんを探しにいく必要はない。
また、入学や卒業、転職、交際(同棲・別れ)など、何らかのタイミングで部屋を探す人がほとんどなので「いつから住み始めたい」「いつまでに今の部屋を出たい」という期限も決まっていることが多く、店に足を運んでいる時点で、ある程度の意思は固まっており、契約してもらうまでの難易度はそこまで高くない。
営業の売上となるのは「仲介手数料」で、金額や割合は物件ごとに異なるが、一件ごとの手数料はそこまで高くない。一方で、ひとりのお客さんに対して複数の物件を案内し、それぞれ移動や説明の時間が入ってくるため、一日に応対できるお客さんは意外と少なく、効率的に契約につなげていく必要がある。
C.魅力・面白さ
お客さんの希望を聞いた上で、どんな部屋が合うのかを考え、提案していくという、まさに王道の「営業」の面白さを体感しやすい、というのが「賃貸仲介」の魅力だ。
というのも、「部屋の間取り」を見て、まったく何のことか分からない人はほぼいないだろう。そして「バス・トイレ別のほうがいい」「キッチンは広いほうが便利」など、ふつうに生活する人の目線として、どんな物件が良いかはなんとなく想像がつくだろう。つまり不動産の知識がゼロの未経験者でも、ある程度はイメージしやすい商材なのである。
だからと言って、誰が提案しても同じというわけではなく、たとえば「南向きにバルコニーがあるから洗濯物が干しやすい」「都市ガスだとガス料金は安め」など、知っておけば魅力につながる情報も数多くある。それらを少しずつ覚え、提案に活かすことで「不動産屋ならではの提案」もできるようになっていく。
未経験でも始めやすく、意外と奥深い提案営業。それが賃貸仲介だ。
D.知っておくべき点・注意点
上に書いた通り、賃貸仲介として売上を多く上げるためには、できる限り的確・効率的にお客さんの希望を把握し、提案し、契約につなげる必要がある。そのクオリティが低ければ、何件も何件も紹介して一日中動き回ったのに契約ゼロ…なんて日もある。月に一件も取れない、なんてことはほぼないが、「何もしなくても契約につながる」というほど楽な仕事ではない。
また、入居希望者とばかり接しているイメージが強いが、仲介する相手の片方は物件のオーナーであり、オーナーさんと良い関係を築くことも大事である。内見時にはカギを借りたり、敷金・礼金値下げの交渉をしたり、逆に入居者を紹介してもらえるようにお願いされたり、色々な場面でやり取りが発生することは覚えておくとよいだろう。
E.給与体系
賃貸契約が成立するごとにインセンティブが支給される会社もあるが、一件につき数千円から、多くても数万円ほどだ。難易度が高くなく、営業数字に対するプレッシャーもそこまで強くない分、不動産営業の中では給与水準は控えめと言える。とは言っても、事務職や販売職と比べれば全然高く、他の不動産営業と比べると安定して収入が得られる(売上が落ちたときでも収入が下がりすぎない)というメリットはある。
F.向き/不向き
「自分が部屋を探すとき、ついつい部屋を見比べてしまう」「間取りを見るのが好きだ」という人には向いているだろう。その興味が活かされ、知識を身に付ける楽しさも得られる。
また、不動産の中でも身近な分野のため提案がしやすく、「しゃべりがそこまでうまくない」「ガツガツと売り込んでいく営業は苦手」という人にもチャレンジできる仕事である。
一方で「難易度が高くても大変でもいいから、とにかく稼げる仕事がしたい」という人には、他の不動産営業をおすすめする。
3-2-3 リフォーム・リノベーション
新築の不動産価格が高くなっていることから、近年人気なのが「中古物件のリフォーム・リノベーション」で、その提案営業も求人が増えている。
A.仕事の流れ
リフォームは、古くなった物件を「新築の状態にまで戻すこと」を指す。ボロボロになった屋根や外壁、内装(壁紙や床)を塗り直し・張り直したり、老朽化したキッチンや風呂を差し替えたりして、見た目が新築同様になるようなイメージだ。
リノベーションは、古くなった物件を「新築+αの状態に刷新すること」を指す。外装・内装の変更はもちろん、壁を取っ払ってリビングを広くしたり、逆に仕切りを設けてウォークインクローゼットをつくったりと、間取りごと変える大規模な改修も含まれる。
仕事の流れとしてはまず、リフォーム・リノベーションを希望するお客さんに対して、どのぐらいの予算で何を実現したいかをもとに提案をおこなう。その上で、ご納得いただけて契約につながったら、社内の工事部門や外部の工事業者と連携しながら、作業完了して引き渡すところまでサポートしていく。
あつかう金額は、小規模のリフォームで数十万円~数百万円、大型のリノベーションにもなれば、数千万円ほどの規模になるケースもある。
B.営業スタイル
会社ごとにお客さんの開拓の仕方・接点の持ち方が変わる。
大手ハウスメーカーなどで、新築物件を扱う部門が社内にある場合は、過去にその物件を販売したお客さんが営業対象となる。住み始めてから長く経過したお客さんに対して連絡を取り、古くなった箇所についてリフォームやの提案をおこなっていく。
リフォームやリノベーションを専門にあつかう会社の場合は、チラシや自社のHPなどを見て問い合わせがあったり、専門の店舗がある場合はそちらに来店したりしたお客さんに対して、同様に提案をおこなう。中には完全新規開拓の場合もあり、営業先の地域を足で回りながら、外壁が老朽化した物件などを見つけては訪問して、提案していく。
C.魅力・面白さ
住み慣れた街・住み慣れた家を出たくはないが、いまの住まいに不満を持っているお客さんは少なくない。リフォーム・リノベーションによって生まれ変わった家を見て、感動の声をもらえることが何よりのやりがいとなる。ある箇所の改修を気に入ってもらえて、また数年経って別の箇所をお願いされたり、お客さんの紹介を受けたりすることもあり、信頼がつぎの仕事を呼ぶことにもつながりやすい。
また、一つの家を改修しながら長く使おうという考え方は、サステナビリティが注目されるいまの世の中にも合ったもので、これからその注目はさらに高まっていくだろう。リフォームやリノベーションの経験や知識を身に付けることは、不動産営業としての市場価値を高めることにもつながるはずだ。
D.知っておくべき点・大変な点
すでにある物件に対しての改修のため、内容によってはその物件の制限を受けてしまうことがある。「水回りの構造が特殊でかなり費用がかかりそう」「この構造では希望の間取りへの変更は難しい」といったように。自分自身が建築や工事についての知識をすべて身につける必要はもちろんないが、一定の専門知識を持っておいたほうがスムーズにいったり、後々クレームにつながるリスクを減らせたりするというのは覚えておくべきだろう。
また、営業スタイルに書いた通り、会社によっては飛び込みの営業中心にお客さんを開拓することもあるので、体力的・精神的に大変な職場も存在する。お客さんの開拓の仕方が何かは聞いておくとよいだろう。
E.給与体系
販売ほどではないが、こちらもインセンティブは発生することが多い。金額はおよそ数万円と思ってよいだろう。大型のリノベーションになると成約まで長期化する可能性もあるが、小規模~中規模のリフォーム・リノベーションであれば比較的短い期間で成約につなげることもできる。販売営業のトップクラスとまではいかないまでも、1000万円超えも十分に目指せる職種だ。
F.向き/不向き
自分が住んでいる家や部屋をもしリフォーム・リノベーションすると考えたとき、いろいろなアイデアが浮かんだり、そもそもそれを考えること自体が楽しいと感じたりしたら、この仕事の適性があると言ってよい。すでにある物件を生まれ変わらせるため、土地探しから理想の物件探しから手伝うような接し方がしたい方には合わない。
また、会社にもよるが、時には積極的にお客さんを開拓しなければいけないため、新規開拓バリバリの営業に抵抗がある場合は、会社の特徴を見極める必要があるだろう。
3-2-4 用地仕入れ
不動産という商品を売ったり貸したり直したりする営業と違い、その前段階で、そもそも不動産という商品を仕入れてくる仕事が「用地仕入れ」である。
A.仕事の流れ
「用地」とは、土地や物件のことを指す。
その目的により仕入れるものはさまざまで、たとえば建物を新しく建てるために土地だけを仕入れてくるケースもあれば、リノベーションして売るために中古の物件ごとを仕入れるケースもある。自由に手に入れてよい土地(物件)なんてものは存在しないので、当然ながら、仕入れ対象の用地にはそれを所有するオーナーがいる。
「土地を持っているが活用できておらず、空き地のままで税金だけかかっている」「アパートの大家だが、年を取ってから管理が大変で困っている」「会社が倒産して社屋と土地を手放すことになった」など、オーナーはいろいろな事情や悩みを抱えており、急に土地や物件を入手できる可能性が出てくることだって珍しくない。ときに人脈やネットワークを使いながら、さまざまなオーナーと信頼関係を築き、耳寄りな情報が入ったらすぐに動いて、土地や物件を売ってもらう。それが用地仕入れの仕事である。
B.営業スタイル
自分たちが「買う」営業(=お金を出すのは自分たち)なので、相手に大金を出してもらうより簡単だと思ったら大間違いである。あなたが持ち物をいきなり売ってくれと知らない人に言われても警戒するように、オーナーとの関係性がない状態で、所有する大切な不動産を売ってもらえることはない。
まずはオーナーと接点をもつところから始まり、少しずつ信頼関係を築いて、売却を検討したタイミングで声をかけてもらえる状態、もしくはこちらから定期的にコミュニケーションが取ることが許される状態をつくっていくことが何より重要だ。不動産オーナーは同じような営業を嫌というほど受けてきているので、その中でも「この営業は信頼できるな」と思ってもらうのは、なかなか難しい。相手に好かれる人柄や接し方はもちろん、役に立つ情報を定期的に提供したり、自社の利益ありきではなく相手を第一に考えた提案をしたりする必要があるだろう。
C.魅力・面白さ
販売にしろ、賃貸仲介にしろ、投資にしろ、元となる不動産がなければ始まらないわけで、まさに不動産ビジネスの起点となる「用地仕入れ」は、花形とも言える職種だ。大規模な用地仕入れであれば、何十億円・何百億円もの大金が動く可能性もある。
古物商が仕入れる商品を見極めるときのスキルを「目利き」と言うが、その不動産をどんな目的でどう活用するかを考え、いくらで仕入れるかは、まさに用地仕入れの目利きにかかっている。
一般人から見れば特に魅力的に映らない土地や物件も、思わぬ活用によって日の目を浴びるかもしれないし、大規模の用地仕入れになれば、いずれその街のシンボルになるような新たな物件を建てるプロジェクトにつながるかもしれない。
D.知っておくべき点・大変さ
日々さまざまな方向にアンテナを張り、フットワーク軽く情報収集や営業活動をしつづける必要があることが用地仕入れの大変さの一つだ。数年がかりでの仕入れになることもあるので、諦めずに追いかけつづける忍耐力も必要と言える。
また前提として、業界未経験から用地仕入れとして活躍できる可能性はそこまで高くない。さまざまな現場を見てきた経験と、不動産についての幅広い専門知識と、業界内やオーナーへの顔の広さや営業力と、将来を見据えて活用法を見出す鋭い嗅覚。そういったものが必要になるため、業界経験をしっかりと積んでおいたほうが、結果は出しやすいと言える。
E.給与体系
専門性が高く、不動産ビジネスの起点となる重要な職種であるため、そもそもの給与水準が高く、さらに契約成立ごとにインセンティブも付与されることが多い。平均は500万円~600万円と言われているが、活躍している用地仕入れであれば、年収1000万円を下回ることはまずない。
F.向き/不向き
業界経験者にとっての向き/不向きになるが、たとえばこれまでの不動産販売経験の中で「自分だったらこういう物件を仕入れる」「あのエリアの土地を開拓できるともっと売れるのに」といった改善案が自然と浮かぶような人には向いているだろう。
それだけでなく、そのアイデアを実際に仕入れるための「情報収集力」「関係構築力」「実行力」がともなわければ結果にはつながらないため、それらにも一定の自信がないと難しいだろう。
3-2-5 不動産投資営業
不動産を自分たちが住む物件としてではなく、投資対象として考えてもらう職種が「投資用不動産の営業」だ。
A.仕事の流れ
自分で住む物件=居住用の物件ではなく、購入した不動産を誰かに貸し、入居者から家賃収入を得ることを目的にするのが「投資用の不動産」である。この投資用不動産の購入をすすめるのが「投資用不動産の営業」だ。
相手は、ガチのお金持ちである富裕層もいれば、そこそこの収入がある上場企業の社員なども対象だ。電話や対面で商談をおこない、購入する物件の金額や投資対効果(月々どのくらい収入が入るかなど)に納得してもらえたら契約に映る。
B.営業スタイル
見込みのあるお客さんを獲得する方法は、主に電話だ。いわゆる「テレアポ」をひたすらしながら、興味を持ってくれるお客さんを一人でも多く探していく。
お客さんにとっては自分が住むわけではないため、エリア・間取り・内装などにこだわる必要もない。そのため、長い時間をかけて深い関係性を築く営業というよりは、短い時間や限られた接点の中で、お客さんに「投資してもいいかな」「してみようかな」という判断を下してもらえるよう、必要な情報を的確に伝えることが必要だ。
C.魅力・面白さ
まず、投資についての広い知識が身につくことが挙げられる。ほかの投資と比べてなぜ不動産がよいのかを提案する中で、自然と自身も投資やお金について詳しくなれるだろう。対象となる顧客には富裕層やハイクラスのビジネスパーソンが多く、そうした方々と対等に会話するスキルも磨かれる。
そして何よりその魅力は「収入」だ。歩合給中心でガッツリ稼げるといえば不動産販売もそうだが、こちらのほうが始めるハードルが低い。いきなり対面での長時間の打ち合わせから入るのではなく、電話での数分の会話を通じて、詳しく商談するためのアポイントを獲得すればよく、必要な知識も他の不動産営業ほど広くないため、未経験でも取っつきやすいのだ。一方で、それなりの金額を扱うため、成約ごとにインセンティブはどんどん入る。年収1000万円超えを目指すことだって夢ではない。
D.知っておくべき点
テレアポ営業かつ一般人にとってやや興味を持ちづらい商材(もしくは警戒されやすい商材)のため、電話を何百件かけても1件もアポが取れない、というハードな状況を経験することもある。
逆に、内勤でのテレアポ営業が中心のため、他の不動産営業のような外回りは少ない。夏や冬にも空調のきいたオフィスで働くことができるのを魅力に感じる人はいるだろう。
E.給与体系
歩合給中心の給与体系で、あつかう物件の金額にもよるが、成約一件あたり数万円から数十万円のインセンティブが入る。一ヶ月で複数の契約が取れれば、月収100万円超えも十分にねらえる。
F.向き/不向き
テレアポに抵抗がある人にはあまりおすすめしないが、テレアポ自体は苦手でも、お客さんを一人でも多くゲットするために必要なものだと割り切れる人には向いているかもしれない。
また同じ理由で、お客さんとじっくり深い関係性を築いていきたいタイプの方ともマッチしない可能性が高い。もちろん、一定の信頼関係を得ないことには契約にも至らないので、人と話すのが好きな方には向いている。接客業やサービス業の経験はおおいに活かすことができるだろう。
4.おわりに
それぞれの不動産営業の違いについて、理解が深まっただろうか。いろいろな種類の営業があり、それぞれに特徴があることが分かったはずだ。ぜひこれらを参考にしつつ、自分に合った職種を見つけてほしい。